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zoom RSS デュトワの「シェエラザード」新旧対決!!

<<   作成日時 : 2010/12/04 13:20   >>

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シャルル・デュトワ指揮/ロイヤル・フィルの「シェエラザード」が登場しました。
リムスキー=コルサコフを聴くなら、やっぱりこの曲に限りますね。

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新盤、渋いジャケットです。
今年4月、ヘンリー・ウッドホールでの最新録音です。

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↑対してこちらは旧盤、'83年に録音された、モントリオール交響楽団との録音です。
まさに名盤中の名盤、このCDに出会ってすぐは毎日毎日繰り返し聴きまくりました。
おそらく私のクラシックのCDで再生回数がトップ3に入るはずです。

旧盤に出会ったのはもう20年近く前になりますが、世の中のいろんなCDに手を出してみても、どれもこれも
アンサンブルの精緻さと録音のよさでデュトワ盤には到底及ばない。

こういう色彩的な音楽の録音では、各楽器の音色を鮮明に捉えているだけでなく、その音色もまた美しいこと、
各パートのパワーバランスが整っていること、特に低音域が十分な豊かさを持つことが最低条件!だと、私は
思っています。

一方で、こういう曲では、必ずと言っていいほど「必要以上にノリがいいもの」があります。
ライブで一度聴くだけならいいけど、アンサンブルの不精緻さが耳について何度も聴くことはできません。

というわけで、デュトワ盤を超えるものはおろか、並ぶものさえ1枚もなく、「もう他のCDを買ってもしょうがない!」
(正確に言えば「買うだけムダ!」)と思うに至ったのですが・・・

同じデュトワ氏による27年ぶりの再録音ということであれば、やはり気になるというもの。
店頭で発見して早速買ってきました。

まずは、新旧の各楽章の演奏時間をどうぞ。

旧盤 10:32  11:32  10:34  12:27
新盤 10:45  11:46  10:36  12:37

これだけ見ればそれほど大きな変化はないと思いますが、この差以上に聴いた印象は大きく変わっています。

新盤は録音は上々、第1楽章の出だしから華麗なサウンドを聴かせてくれます。
全編にわたって爽やかで、デュトワ氏ならではの上品さに包まれており、特に弦楽器の歌の呼吸は旧盤よりも
ずっと深くなっていますから、これまた名盤の仲間入りをすることになるでしょうし、今後そういう評価がたくさん
出てくると思います。

・・・と言いつつ、旧盤大好きの私にとっては、何か物足りず、つまらないのです。

私の印象では、一言でいえば、「スピード感」「躍動感」「推進力」がなくなってしまった演奏です。
七三分けのお堅いサラリーマンみたいな印象です。

旧盤をお持ちの方は、あらためて買い足す必要もないというのが正直なところです。
また、「シェエラザード」のCDを新たに買いたいという方にも、旧盤のほうをおすすめしたいです。

旧盤はもう27年も前に録音されたものですが、デッカ全盛期の録音だけあって各楽器の鮮明な音像が見事で、
録音会場のユスターシュ教会の豊かな残響をフルに活かした、鮮やかで色彩感あふれるピラミッドバランスの
サウンドは文句のつけようがありません。

このCDの帯の宣伝文句、「デュトワ&モントリオール響によるゴージャスな一大ページェント!」ですが・・・

デュトワサウンドというのは、透明感あふれるやや細身の知的で洗練された音色であり、「ゴージャス」という
形容詞がもつこってり感とは対極にあるものと言え、違和感がありますが、デュトワ/OSM黄金時代の、とびきりの
極上サウンドを満喫することができるのは事実です。

この演奏を「きれいなだけ」「バランスを整えただけ」と批判する声もあるようですが、それではなぜこんなに華麗な
譜面を作曲家は遺したのでしょうか。

それに、実際に演奏する側に立てば、いかにこの録音の完成度が高いかわかるはずです。

では、特に印象に残った部分(というか昔からよく聴く箇所)について個人的な感想を。

◎ 第1楽章の海の主題

 旧盤・・・
  どの旋律も音の立ち上がりが丸く、弧を描くように歌われます。
  クレッシェンドもディミヌエンドも曲線的で、これが豊かな低音に支えられた響きと相まって大海原のうねりを
  表現しており、荒海の中を航海する帆船の姿が目に浮かんできます。

  ティンパニの、これまた弧を描くようなダイナミックなクレッシェンドを伴って練習番号Eに入る瞬間(5:42)は
  感動もので、旧盤の最高の聴きどころのひとつです。  

  練習番号Eへの入り、スコアのままでは、音楽の流れという点でやや違和感があるんですね。

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  ご覧のとおり、Eの直前はスコアに細かな指示がありません。
  クレッシェンドもリタルダンドもなく、Eで、それまでのfからffにいきなり変わるのです。
  夜だったのが次の瞬間に突然昼に変わってしまうような唐突さ、とでも表現すればいいでしょうか。 

  旧盤では、ティンパニのクレッシェンドとともに、微妙にリタルダンドをかけることで大波が押し寄せるような
  ダイナミックな音楽のうねりを生み出して見事なクライマックスを築き上げています。
  その後Eで現れるホ長調の和声にはもはや違和感などなく、感動とともに新しい世界へと突入していきます。

  なにがすごいって、純音楽的なアプローチだけでこれだけの偉業を達成したことです。  
  そのカッコよさは言葉では表現できないほどで、これ以上の演奏は考えられません!!

 新盤・・・
  低音がイマイチ響かない。歌も伸ばしも直線的で、揺れもうねりもなく航行する大型タンカーのようです。
  練習番号E(5:52)へのアプローチ、ティンパニのクレッシェンドがイマイチで、全体的に直線的で躍動感がない。
  Eへの入りが「木に竹を接ぐ」印象で、せっかくの見せ場なのに勢いがなく、いま一つ盛り上がらない。
  ただ、どちらがスコアに忠実かと問われれば、新盤のほうなんですね。

◎ 第2楽章、練習番号Hの行進曲

 旧盤(6:13)・・・
  木管楽器の軽快な歌、弾むような弦楽器のピチカートは生き生きとした表情でわくわくしてきます。
  このピチカートがこれまた音程がよく聴こえて、すばらしくよくハモる。  

 新盤(6:19)・・・
  テンポが遅く、旧盤と比べると木管のリズムがなんとなくよちよち歩きで、音楽が前に進まない。
  低音が弱く、ピチカートがなんとなくおまけに聴こえる。

◎ 第2楽章の終結部

 旧盤・・・
  アップテンポで颯爽とした演奏が、空の彼方に飛び去る鳥のような奔放さ、世界の広がりを感じさせる。
  この広がりが、第3楽章が始まるまでの静寂の中に豊かな余韻を与えてくれます。  

 新盤・・・
  テンポが遅く安全運転、それゆえ、音が消えると音楽の流れが止まり、余韻がない。

 第2楽章の最後の1音、シンバルはあるのに大太鼓はありません。
 ほかのところではこれでもかというくらいシンバルとセットで出てくる大太鼓が、ここにはない。

 昔オケ仲間で「なんでここに大太鼓がないのか?」と話題になったことがありました。
 で、「ここに大太鼓を入れるのは変!!」という結論になったのですが、ではなぜ変なのか、それは、
 「大太鼓が入ると音楽の流れを止めてしまう」からなのです。

 音が鳴り終わって、お疲れ!ってノリで音楽の流れまで止めてしまってはいけないということなんですね。
 その意図を見事に再現してくれたのが、まさに旧盤の演奏なのです。

 この部分、スコアの指示では1拍のテンポが144で、演奏の速さは新盤のほうが近いんですね。
 
◎ 第4楽章のバグダッドの祭り〜海

 旧盤・・・
  やや力を控えめにしているものの、それゆえアンサンブルは常に極上で、音色も常に美しいのがすごい。
  感情的な表現ではないけれども、音楽が絶えず前に前に進むのが心地よい。
  ハチャメチャに突っ走るのではなく、スピード感と知性のバランスが絶妙なのです。
  かつてのデュトワ氏の、6/8拍子とか符点音符のリズム処理がずば抜けて素晴らしかったことをあらためて
  実感できます。
  
  練習番号W(7:10)からの弦楽器のスラーの有無の描き分けはほとんど完璧なレベルです。

  552小節(7:17)で音程がEからHに変わるティンパニ、それがきちんと聴こえてくるのも大きな魅力です。
  他の多くのCDは、ただ単に勢いで叩いてるだけで、ここで音程が変わったかどうかもよくわからないし、
  ティンパニがハーモニーの一部になっていることなど、まるで伝わってきません。
  ここで低音楽器の音程が変わることで、全体の響きもがらりと変わるのです。
  
  さらに、練習番号X(8:06)からのラッパの「海の主題」、これもまた旧盤の聴きどころで、もうゾクゾクしますね。
  ここでも、ラッパは曲線的なクレッシェンドを伴って浮き上がるように登場し、音楽的な統一感が見事です。
  ホルンやトロンボーンの音量を抑えることで、クリアな響きを出しています。  
 
 新盤・・・
  祭りのアンサンブルはやはり精緻でノリは悪くないけど、どうも音楽が前に進んでいかない印象。
  練習番号W(7:03)スラーの有無の描き分けは、旧盤ほどこれ見よがしではないものの健在。

  ティンパニ・・・
  552小節での音程が変わるのはわかるけど、音楽的な説得力はイマイチです。
  554・558小節に、スコアにない変なクレッシェンドがありますが、流れを止めてしまって逆効果です。    

  練習番号X(8:02)からのラッパは、ごく普通という感じ。
  全体的に、低音のバランスが弱いのがマイナスに作用しています。

 実は、ここでも練習番号Xは新盤のほうがスコアに近いはずです。
 旧盤ではデュトワ氏のバランスコントロールが独自で、それゆえ他の録音では聴けない響きが楽しめるのです。 

・・・・・・

スコアに近いのは新盤、ということは頭で理解できても、聴いて楽しいのは圧倒的に旧盤のほう。
というわけで、私は今後も旧盤1枚で十分です。

聴けば聴くほど、旧盤の恐ろしいまでの完成度の高さには(志鳥栄八郎氏風に言うと)「舌を巻く」思いです。
今後、旧盤を超える精緻な録音の登場はまずないでしょう。

・・・・・・

さて、旧盤のモントリオール交響楽団(略称OSM)は、'77年にデュトワ氏が音楽監督に就任したあと、なんと
40%の団員が入れ替わったそうです。

「私は楽団員を一人たりとも首にしたことはありません。彼らの中の何人かは、私が彼らに課したプレッシャーが
気に入らなかったので、去って行ったということでしょう。現在のOSMは非常に若いオーケストラです。大部分の
プレイヤーが30歳以下ですから。大半が、OSMがプロの楽員として最初の職場なのです。これには、彼らが
悪い慣習に染まっていないという大きな利点があります。私は自分が望んでいるサウンドを創りあげることが
できます。それは一点の濁りもない音のことです。私は音の濁りが大嫌いですから。」

これは、「幻想交響曲」のCD(POCL-5060)の解説に掲載されている、インタビュー記事の抜粋文です。
三浦淳史氏の解説は情報量が多く、読みごたえがありました。

このようにして世界有数のサウンドを創り出すオケに変身したのですから、デュトワ氏の意向が隅々まで浸透して
いたと言えるでしょう。

旧盤はあざとい演出こそありませんが、その音響設計の巧みさは他の録音と比較すればするほど鮮明に
浮かび上がってきます。

旧盤の特徴、それはそのまま、録音当時のデュトワ/モントリオール交響楽団の演奏の特徴でもあります。
これほど、誰の作品を録音しても同じ美感を徹底的に貫いていたコンビは珍しいでしょう。

打楽器の音色までもが完璧に方向性が統一されて、音の立ち上がり、音を出すタイミング、その鳴らし方まで、
演奏の基本になる部分が細かいところまで見事に揃っている。

ティンパニをオケとハモらせるためには一定の訓練が必要ですが、それ以上に小太鼓やタンバリンはオケと
とにかくハモりにくい楽器です。
多くの録音はオケの音色と打楽器の音色が全く合っていないため、演奏がいいとか悪いとかいう以前に、
その時点でダメなのです。

旧盤のすごさは、ティンパニまでもが他の楽器と溶け合う音色を持ち、しかも和声の一部を担う楽器として機能
していることでしょう。

その美意識に加えて、音楽が常に「拍」を感じさせ、何小節にもわたる旋律を明確に1つのフレーズとして歌わせる
ことで、「今」と「次」が強い結びつきを持ち、よどみのない音楽が生まれる。
これは、'90年代の録音においても聴き取ることができます。

新盤もいい線いっていると思いますが、イギリスの名門オーケストラに少し遠慮しているような気がします。

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